rompercicci::diary

東京中野にあるコーヒーお酒ジャズのお店ロンパーチッチ

中野駅北口利用者以外には伝わらなさそうな話

本日もご来店ありがとうございました。おかげさまで平日にしては珍しくお客さまに恵まれた1日になってくれました。ゴールデンウィーク明けてからすっかり負けグセが身についたせいか「いったい景気がよかったころはどんなお客さまがウチに来てくれてたんだっけ?」なんて思い出そうにもアタマ真っ白、どなたの顔も浮かんでこない体たらくだったのですが、そうかこのお客さまが来てくださってたのか! と今日はひざを打つこと数回、改めてみなさまのご来店に感謝しきりです。ありがとうございます。
本日いらしてくださったみなさまにすばらしいことがありますように。

定休日明けの朝、二日酔いを抱えつつカバンの中に手を突っ込んだら中から見知らぬCDが出てきたのです。タイトルは『SUNMALL』。アーティスト名はさとうさおり。あー、さとうさおり。思い出してきた。すっかり酩酊して終電で中野駅に着いて、北口からサンモールに入ったところで久々にお見かけしたんだった。会社勤めのころとちがって残業帰りの深夜にサンモールを歩くこともなくなったし、定休日の夜にサンモールを通り抜けることがあってもなかなかお目にかかる機会がなかったし、遭遇するのはかれこれ1年ぶりくらいか、もっとか。
と、ここまで書いても普段の通勤・通学で日常的に中野駅北口を利用されない方にはサッパリかと思いますので軽く説明しますと、さとうさおりさんというのは中野駅北口を出てすぐのサンモール商店街で、主に夜更けの時間帯によく歌っている路上シンガーの女性です。もうずいぶん長いこと歌っているような気がします。私が中野に住むようになってかれこれ10年、もうそのころにはすでにあの場所で歌ってらしたような記憶があります。
記憶なんていいかげんなものですが、それでも今になって振り返ると、残業明けの会社帰りには常に彼女の歌声が聞こえていたような気がします。当時はいちども立ち止まらなかった。「お、やってるね」くらいで通過。いや、それさえもない。「お、やってるね」なんて思えるほどのココロの余裕なんてなかった。ただ通過。それでも数年にわたって目の前を歩き続けていると、やっぱり不思議と愛着が湧くものなんですね。ここ数年サンモールを歩いていて、たまたま彼女が歌っている姿を目にすると「ああ、まだあそこで歌っていた。よかった」なんて思うようになりました。彼女が歌っていてこそのサンモール商店街。
あの夜、私はアルコールで浸された脳でひどく感動していたのでしょう。ああ、しばらく見かけなかったさとうさおりさんがまだあそこにいた。で、おサイフからいそいそと1000円札を取り出して彼女に差し出し、「久しぶりにサンモールでお目にかかれてよかったです」みたいなことを口走ってそのまま逃げようとしたのです。そしたらさとうさん、ギターケースの中からCDを1枚取り出して「じゃこれどうぞ、1000円だから」と手渡されたCD。それが数時間と記憶の欠落を経て、今私のカバンの中から発掘されたのでした。

また遅くなってしまったのでいろいろすっ飛ばして書きます。さとうさおりさんが数年にわたって深夜ひとりサンモールの路上で歌い続けているということは、(さとうさん個人の偉業であることは言うまでもありませんが)とりもなおさずあの一帯の治安なり風紀なりがそんなに乱れてないことの証でありましょう。「中野駅北口サンモール商店街は、深夜に女性がひとりでいても大丈夫な場所なんだよ」ということを彼女が身を以て証明してくれている。いや、もう少し踏み込んで、さとうさんがあそこで歌い続けているからこそ、あの場所は深夜でもそれほどガラが悪くならないのかもしれません。私たちはもっとさとうさんに感謝してもいいような気がしてきました。ときどきは彼女の前で足を止めてみてもいいのかもしれない。歌を聴いて、拍手して、フトコロ具合によっては何がしかの気持ちを差し出してもいいのかもしれない。
みなさまも、もし機会がありましたらさとうさおりさんから『SUNMALL』お買い求めになってみてください。その名の通りサンモール商店街での路上ライブ一発録り。手売り限定っぽいから、ひょっとしたらJ.R.モンテローズの『In Action』みたいにバケるかもしれません。

外はすでに雨。明日はお天気イマイチの予報。みなさまのご来店を首をすぼめてお待ちしております。