rompercicci::diary

東京中野にあるコーヒーお酒ジャズのお店ロンパーチッチ

★(前編)この音には勉強代がかかっているが、それだけの勉強をしたかは謎だ

こんにちは。中野のジャズ喫茶ロンパーチッチです。
いつもありがとうございます。
お天気にも恵まれた土曜日の昼下がり、活気あふれる近隣商店の盛況ぶりをよそに、まさかの大ぽつねん大会会場となっている当店より近況報告をお送りしたいと思います。
だってそうでもしないと、お店にひとりで淋しすぎるから…[状態C]。

【近況】お店のアンプ、やっと正選手が決まりました

このブログでも折に触れ告白しておりますが、当店の人間はオーディオのことがほとんど分かっていません。真空管とか回路とか、トランスとかコンデンサとか、そういった魔法使いが使う言葉の意味を理解していないのはもちろんのこと、「機械Aと機械Bを比べてどっちがよい音がするか」という聴覚レベルでの価値判断もマトモに下すことができません。「オマエが理想とする音に近い方が正解だ」みたいな至極もっともなアドバイスを頂戴することもあるのですが、そもそも理想とする音がよく分からない、というアチャーな状態です。

そんな人間が音楽をお聴かせするお店を開いたこと自体がそもそも間違いの始まりなのですが、この間違いに再検討のメスを入れてしまうと「人生オワタ\(^o^)/」という結論しか導き出されないことは明らかですので、今回は根本的な問題からはあえて目を逸らすとして(今までそうやって生きてきました)、ではよく分からないオーディオなるものとどうやって付き合っていくか、というのはかなりアタマを悩ませるところであります。

…ああ、なんだか最初から書きたい内容とズレてきました。「オーディオ関係のことは書きたくない」と書きたかったのです。「なぜなら、後になって自分たちの首を絞めることになりかねないから」

「オーディオの世界には魔法使いたちが住んでいて、魔法使いたちはときどき下界のジャズ喫茶なるところに降りてくることがあるらしい。ジャズ喫茶なるところの店員も多くの場合魔法使いの一員で、彼らは魔法使い用語を駆使して丁々発止のやり取りを楽しむらしい」
(以上、私の偏見に満ちたオーディオファンとジャズ喫茶店員の関係図)

しかし、私たちは魔法使いではありません。魔法使いの能力を持たないジャズ喫茶店員が、ブログにオーディオ関係の記事を書いてしまうと、ひょっとしたら触発された魔法使いがお店に降臨してしまうかもしれません。ホンモノの魔法使いを目の当たりにした私たちは、しかしお店から逃げ出すわけにもいかず、魔法使いが繰り出す呪文攻勢を正面から喰らって、ライオンに足の先からゆっくりと食べられていくような時間をすごす破目になりかねません。

…と、ここまでが長い前置きです。上に書いたような危惧にもかかわらず、やっぱり今回のアンプの件については書きたいと思いました。というより、書かないともったいない、という気持ちです。今回は結構な勉強代を投入してしまったのです。せめてブログのネタくらいにはして気持ちの整理をつけないと。


ええと、順を追って書きます。過去のブログと内容の重複があるかもしれませんが、そこはご容赦願います。

最初に、私たちがお店を始めるにあたって、秋葉原の某オーディオ販売店でアンプを購入しました。販売店の担当者さんが推薦してくれた、すごく見映えのよい、50年くらい前のイギリス製の真空管アンプでした。

…まずこの時点でおかしいです。オーディオ含めて機械系全般に疎い人間が、なんで50年も前の電化製品に手を出すのか? いくらアタマの弱い私たちでもさすがにそこは躊躇しました。信頼できる人にも相談しました。「やめとけ」と言われました。それなのに買ってしまいました。担当者さんの「悪くなる部品は全部新しくていいやつに交換してあります。おふたりの寿命まで持ちます」という太鼓判を信じたのです。そう、それに、あのアンプは見た目がよかった…。

開店して2、3週間後には、左のスピーカーからノイズが出始めました。電源のオン・オフを繰り返すとノイズが消えるのですが、真空管アンプでオン・オフをパチパチやるのはご法度だそうで、早速1回目の入院となりました。代替機を用意してもらって、2週間ほど待って退院。カルテには「入院先の環境ではノイズが出ませんでした(現象再現せず)。とりあえず各種接点のクリーニングをしておきました」と書かれていました。

退院後1週間ほどしてまたノイズが出始めました。すぐに2回目の入院。同じカルテと共に退院。そろそろ私たちが販売店の担当者さんを見る目つきも変わってきました。担当者さんの口ぶりも微妙に変わってきました。「古い機械なので、今の機械と同じ考え方で扱うものではない。付き合い方が大切です」みたいなお話をされるようになりました。

2回目の退院後も、やっぱりノイズ発生。朝の電源初回投入時に決まってノイズが出てきます。またか、と思いながらも、お店は営業しなきゃいけないので、電源オン・オフを繰り返す対症療法に頼る頻度も増えてきました。
そんな中で、アンプの不調はネクストステージに達します。左のスピーカーから音が出なくなってしまいました。これも電源オン・オフの繰り返しで回避できる問題だったので、泣きそうになりながらも対症療法を繰り返しました。担当者さんに電話して、現在の症状を伝え、いよいよやばくなったらまた入院をお願いする旨を連絡しました。

そしてとうとう、何回オン・オフを繰り返しても音が出ないまま、という日がやってきてしまいました。大慌てで販売店に電話、そのとき、私たちにこのアンプを推薦してくれた担当者さんが、販売店をお辞めになっていたことを知りました。

新しく当店に来てくれた店員さんは、先の担当者さんとはまったく違った考えの持ち主でした。「こんなに古くて趣味性の高いものを、毎日何時間も酷使する店舗で扱うこと自体がありえない」と言われました。ありえない、って言われても…。

そのとき持ってきてもらった代替機が、以前のブログで書いた「高校生の部屋に置いてあるようなアンプ」です。これがすばらしかった。何がすばらしいって、電源を入れたら音が出るのです。それまで毎朝、暗い気持ちでお店に向かって、浮かない顔でアンプの電源を点けていました。今日もダメか…、と電源をオフにして再度オン。2、3回で復調すればよい方で、最後の方には20分くらいオン・オフを繰り返していました。泣きそうでした。ただでさえ営業が厳しいのに(今でも厳しいけど)、なんでこんな目に遭わなきゃいけないのか、かつての自分の判断と、それからあのときの担当者さんを、本気で恨みました。その苦しみから解放されたのです。そして、「もう当面これでいいや」と思ったのです。

…今日中に書き上げられる気がしません。続きは次回ということで。

唐突に、皆様のご来店をお待ちして本日は締めさせて頂きます。