rompercicci::diary

東京中野にあるコーヒーお酒ジャズのお店ロンパーチッチ

読んだ本について書くつもりが古本案内処について書いていた

本日もご来店ありがとうございました。夜桜酒宴にうってつけの気候、さすがに夜の過疎化はいかんともしがたく、もはやこれまでと覚悟しましたが、そこから先に拾う神あり。しばらくぶりのお客さまなどお見えになって、残り1時間でなんとか浮き上がることができました。おいでくださったみなさま、本当にありがとうございました。
本日ご来店くださったお客さまによいことがありますように。

最近読んだ本、挫折した本の話など。私事ですいません。

ご近所「古本案内処」さんの店頭均一箱で拾い上げた沢木耕太郎深夜特急』全6巻(新潮文庫)。
私の学生時代はちょっとしたバックパッカーブームで、同級生の中にも「夏休みにひとりでインドに旅してきた」なんて人間がチラホラと。『深夜特急』はそんな時代に一種のバイブル的な扱いを受けていた本だったと思います。
そのころは今にもまして世をスネていた私は「ケッ、何が“自分探しの旅”だ。何が“ガンジス川のほとりに流れる遺体のすぐそばで悠然と水浴びをしている人々の姿を見て、ぼくはふとこみ上げてきた涙を止めるすべを知らなかった”だ」と勝手に書いてあることを想像してはこの本をこき下ろして、実物を手に取ってみようともしなかったのですが、あれから20年近く。今にして思えばこの本こそが自分たちの世代の数少ない共通言語なのかもしれない、みたいなことをふと思って読み始めて、そして挫折しました。いや、これは40手前の人間が今の時代に読む本ではないですね。すくなくとも自分はムリでした。「これはムリだ」ってことに最終的に気づくまでに耐え忍んで5巻なかばまで読んでいたので、どうせだったらもっと早くに損切りするか、そうでなければ気づかないまま最後まで耐えて読みきるべきだった。

トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』(ちくま文庫)、こちらも古本案内処さんにて。
久しぶりに文化的ヒエラルキーの高い本(というか「読んだ」という事実で人を威圧できそうな本)を攻めてやろうと思って読み始めて、なんとか読了。沢木耕太郎に長い時間を費やして結局挫折したので、負けグセを付けないためにもこいつだけは踏破してやろうとがんばりました。なんだかよくわからないけどビョーキっぽい本でした。訳者の志村正雄さんが書いていた文庫版解説の冒頭がとてもステキでした(引用したいけど現物が手許にない…)。

ジェイムズ・エルロイ『ビッグ・ノーウェア』上下(文春文庫)←今ココ。
エルロイ《暗黒のLA4部作》の2作目。4部作のうちこの作品だけがなかなか手に入らなくて(ほかの3つはブックオフの100円コーナーにゴロゴロ転がっているのに)、もうここまで来たら定価超え承知でamazonマーケットプレイスに手を出すしかない、と思いながら、念のため古本案内処(本日3回目の登場)の店主さんにやんわりと探求している旨伝えてみたら、ほどなくして入荷してくれました。すごいぞ古本案内処。しかも「amazonだと定価オーバーなんです」と言って探してもらっていたので、正直なところ定価程度の出費は覚悟していたのですが、えーと、ものすごく安く売ってくれました。改めてすごいぞ古本案内処。
本来ならば出版順に読むべき《LA4部作》なのですが、事前の知識不足とこの『ビッグ・ノーウェア』の入手困難が相まって、私は「4→1→3→2」とものすごく変則的な順序でこのシリーズと接してしまいました。それでも充分に面白いのですが、若干ネタバレ後に作品を読んでいるような気持ちになってしまうのも否定できないところ。このシリーズの裏主人公、ダドリー・スミス警部の華麗なる暴れっぷりも、4作目『ホワイト・ジャズ』で顛末を知ってしまった後に読むとなあ、ちょっと残念だよなあ。今からお読みになる方はご面倒でも順序を守った読書をオススメしたいところです。

[:W500]

ほかにも酔った勢いで買ってしまった本などあって、向こう数年は何も買わずに読むだけですごせそう…(絶対買うけど)。以前かなり思いきった蔵書の整理を行ってずいぶんと身軽になったはずなのに、またぞろ本がたまっていく生活に逆戻りしております。でも、やっぱり本は買うのが楽しいですね。「本は買うものだ、読むものではない」と極論したくもなります。
長く苦痛に満ちた読書という行為を伴わなければ「読んだ」ことにならない本とちがって、ある程度の時間をぬぼーっとすごしていれば「聴いた」ことになるレコードというのは実にすばらしいものでありますね。

…話がそれたところで今日も失礼致します。
明日もみなさまのご来店を心よりお待ちしております。