rompercicci::diary

東京中野にあるコーヒーお酒ジャズのお店ロンパーチッチ

何買ったんですか?

こんにちは。中野の自称ジャズ喫茶ロンパーチッチです。
滝行のような雨。今日は昼間から延々と優雅な時間をすごしましたが、夜も更けて閉店時刻が視野に入ってきたあたりからにわかに店内活気づきまして、最後の最後で人並に働かせてもらえた1日となりました。こんなお天気の中ご来店くださったお客さまに心からの感謝を捧げます。ありがとうございます。
みなさまによいことがありますように。
初めていらしてくださったお客さまが、また近いうちに再訪してくださいますように。
複数回おいでくださったお客さまのお顔を、いいかげん私が覚えますように。

買いもの帰りのレコード袋を提げてご来店になるお客さま、結構いらっしゃいます。そういったお客さまに「今日はどんなレコードをお買いになったんですか?」みたいに声をかけるべきかどうか、毎回ちょっと悩みます。
もちろん私もレコード大好き人間のはしくれ、その袋の中にはどんなレコードが入っているのか、という興味は世間並に持ち合わせているつもりです。でも、その好奇心を実際にお客さまにぶつけるかどうかとなるとまた別問題。いろいろ考えてしまいます。
たとえば、お客さまが私どもより上の世代の方である場合、まずお声がけしません。ヘタにつついて、「よくぞ訊いてくださった!」みたいなノリになってしまった場合、滔々とお話を伺い続けるだけの気力が私に備わっていないから。早い話が自己保身です。「レコードの知識はお客さまとの会話の中で教えてもらう」というジャズ喫茶店員道からしてみれば言語道断の振る舞いですが、ごめんなさいメンタルが弱いのでそこはがんばれません。
お客さまがお若い方の場合、ちょっと悩みます。このレコード袋はある種の「ツッコミ待ち」なのだろうか? これはお声がけするのが一種のサービスなのかもしれない、と思うのです。もともと興味津々ですから、つい訊いてしまいたくなる。でも、やっぱり、まずお声がけしません。「いやいやいやいやお見せするほどのモンじゃないです!」みたいに全力で拒否されてしまうリスクもありますし。若い方に全力で拒否られてしまった場合、もうその方はお店から離れていってしまうでしょうし。
小西康陽さんのエッセイの中にこんな文章があるのです。ちょっと写経。
 

 [……]ぼくはその喫茶店が気に入っていた。お店のマッチ箱が素敵なデザインだったし、いつも混んでいないところが好きだった。実を言えば他にお客さんがいるのを見たことがなかった。
 ある日、ぼくが輸入レコード店で新譜のアルバムを買ったあと、この店に立ち寄ってコーヒーを飲みながらジャケットを眺めていると、カウンターの中の女性が、それ聴かせてくれない、という。
 もちろん、とぼくは答えた。その日からぼくはこの店に行っていないはずだ。
(「あのとき僕は二十代だった。」『ぼくは散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム1993-2008』20頁)
 

 
やはりお客さまのレコードについては、余計な口を差し挟まないのが賢明なようです。

えーと、もうちょっとまとめるべきですが力尽きました。
明日は台風18号で完全死亡フラグ。とりあえずお店にいます。エクストリーム出勤の帰りにエクストリーム寄り道などいかがでしょうか。
みなさまのご来店を(過度の期待はせずに)お待ちしております。


写真はLCC航空機のドアに掛かっていた標語。